スウェーデンガラスの

20世紀と21世紀のスウェーデンのデザインにおいて、ガラスは非常に重要な役割を果たしてきました。何世紀にもわたってSimon Gate、Gerda Strömberg、Bertil Vallienといった数々のデザイナーたちは、ガラスを利用して数多くの素晴らしい作品を生み出し、今でも世界中の人々の心を捉えて離しません。あなたのお気に入りのガラス作品を是非見つけてみてくださいね!





スウェーデンガラスの歴史

 スウェーデンガラスの歴史は、スウェーデンの南部にある森林に覆われた高台に位置するスモーランド地方から始まりました。この地方はガラス工芸の伝統が受け継がれてきた場所であり、20世紀および21世紀にはスウェーデンガラスとして有名になったKosta、 Afors、Boda、Orrefors、Maleras、Johansforsといった各メーカーが拠点を置く場所でもありました。

Map The Realm of Glass

Melted glass

ガラスの生誕地

 ミッドセンチュリーの全盛期には、何百ものガラス工房がスモーランド地方の南東に集積し、”ガラスの生誕地”と呼ばれました。250年以上に渡って、鍛錬された技術が一つの世代からまた次の世代へと受け継がれ、数多くの素晴らしい作品が生み出されていきました。

 この地方を車で通り抜けると、何マイルにも渡る森林と、その間に点在する木材業、機械産業、そしてガラス産業とともに生きてきた小さな町々を見ることができます。スモーランド地方の人々の勤勉さと創造性が有名なのは、このような環境によるものだと感じることができるでしょう。

Glasswork

自然の資源とガラスの吹き技法

 森と水は大きな自然の恵みであり、これによりこの地域はガラス産業で大いに発展することができました。歴史的に、ガラス産業は17世紀および18世紀頃に徐々に発展しましたが、それは数か所の小さな鋳造所があったことに端を発しています。一番古いガラス工場は1742年創業のKostaであり、ここは今でも地元のガラス作品を製造しています。

 ガラス産業が長い間栄えたこの地域では、昔から家族代々ガラスの吹き技法が受け継がれ、その手法が様々なガラス工房で見られました。しかしそのうち伝統技法から敢えて離れ、自分たちのオリジナルを考える者が現れました。Kostaから離れた4人のガラス吹きが設立した小さなガラス工房、Aforsはその一例です。

Glassworks tools

Glassblowing


ガラス工場でのチームワーク

 スウェーデンガラス産業は度々困難に直面しました。しかしその度に、新しい方法や技術、そして熟練したガラスデザイナーの熱意によってその困難を克服し、それにより常に新しい高品質なスタンダードを維持できる方法を生み出してきたのです。ガラス吹き職人とガラス工場が一致団結することで、スウェーデンのガラス産業は新しい技術を開発し、また伝統的な方法を刷新することで芸術性を高めてきたのです。

Edward Hald

Edward Hald

Edward Hald fish graal vase

1940年代にEdward Haldが製作した魚の花瓶

 

スウェーデンガラスの初期デザイナー

  1910年代、Simon Gate (1883-1945)、Edward Hald (1883-1980)、Edvin Ollers (1888-1959)といったデザイナーたちが活躍したことで、ガラス業界において後続のデザイナーたちへの道を切り開きました。作品制作の工程において、初期の注文段階からデザイナーが携わっていくことが、今では普通のこととなったのです。

Monica Bratt red apple jar

1950年代のMonica Brattの赤いリンゴのジャー

Monica Bratt

Monica Bratt

 

スウェーデンデザインの王道

  第二次世界大戦前に活躍したデザイナーたちが、Evald Dahlskog (1894-1950)、Gerda Strömberg (1879-1960)、Vicke Lindstrand (1904-1983)、Edvin Öhrström (1906-1994)、Elis Bergh (1881-1954) and Monica Bratt (1913-1961)の面々です。昔からのモチーフや新しい技術である”graal”等を用いるなど、純粋で優雅な作品というスウェーデンデザインの王道の概念を生み出したのは彼らの作品でした。

Vicke Lindstrand

Vicke Lindstrand

Vicke Lindstrand Zebra vase

1950年代のVicke Lindstrandのシマウマ柄の花瓶

 

ガラス工房での作業

 今日、ガラス工房の内部を見て回ることは、貴重な経験になるでしょう。大きな音を立てるかまどは、スモーランド地方の木材によって一旦火を入れられると、熱を持ったガスとオイルによってより一層活発になります。砂、炭酸カリウム、ナトリウム化合物、鉛丹等の素材を溶かす作業は、実際かなりの熱さを伴います。これらの溶かされた素材はその後一日かけて形を変え、芸術性のあるガラス作品に生まれかわっていくのです。この熱さを伴う作業は、ガラスのプロフェッショナルによる4~8人のチームで行われています。

Work in in the glasswork

完璧性を追い求めて

 何世紀にもわたって、職人が求めてきたのは技術的な完璧性でした。しかし昔のガラス製品においては、砂に混じる鉄分といった不純物により、その完璧性を実現するのは困難を伴いました。また溶かす作業の際に生じる、ガスといったものから出る、粘性の固まりに発生する泡を省く作業も非常に困難であり、重要なことでした。ガラス吹き職人の中でも匠と言われる人たちは、大きな形に、また完璧に左右対称な器を作る能力のある人たちでした。これらの能力はスウェーデンのガラス工場において、重要な技と考えられたため、20世紀前半においては、様々なガラス工場で働いたデザイナーに重要な基準として広められました。

機能性の中の美

 1917年のストックホルムの展覧会後には、”機能性の中の美”が叫ばれ、数十年に渡ってスウェーデンデザインの基本となりました。よりデザイン性を追求するため、各ガラス工房はより多くのデザイナーを採用しました。その結果、どの世代のデザイナーもガラス工房に所属することにはなりましたが、その多くは工業生産の手法について経験のないペインターでした。この中から、Erik Höglund (1932-1998)や Bertil Vallien (1938-). といったデザイナーが出現しました。

Erik Höglund bull sculpture

Erik Höglundの雄牛の彫刻

Erik Höglund

Erik Höglund

 


ガラスアートの可能性

 ガラス工房で働きはじめたデザイナーにとって、仕事は未知であり、経験したことのないものです。しかしガラスそのものは魅力的で様々な可能性に満ちています。ブロー成形、プレス成形、刻印、エッチング加工、酸加工、ペイント、透明色、染色、細工、上塗り等のように、ガラスは自由に表現ができるのです。もちろん全ての工房において全ての技術を実現できるわけではないので、各デザイナーは自身が所属するガラス工房のできる範囲内で作品を創り出す必要があります。

Artglass at Kosta Boda

Melted glass taking form


ハンドクラフトにこだわって

 20世紀後半には、ガラス製品の機械化について、長い間討論の対象となりました。しかし最終的に、スウェーデンのガラス工房は何百万ものガラス製品を大量生産する自動機械に投資をすることをやめたのです。そして今日、素晴らしいガラス作品はいまだにスウェーデンのガラス工房において手で作られているのです。

 Bertil Vallienの言葉にはこうあります。”私はハンドクラフトの素晴らしさを信じている。手で作る作品は機械にとって代わることはない。ハンドクラフトは、ガラスを吹くこと、磨くこと、そういった多くのこれまでの知識が内包されているのだ。それは経験であり、フォルムを感じることであり、手触り、センスによって生み出される結果なのである。”

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出典: "Vallien" by Gunnar Lindqvist (2006)